『鼓童×ロベール・ルパージュ〈NOVA〉』
衣装デザイナー キム・バレットの最新インタビューが公開
2020年5月23日(土)より上演される「鼓童×ロベール・ルパージュ〈NOVA〉(ノーヴァ)」の衣裳を手掛けるキム・バレットの最新インタビューが公開された。
キム・バレットは、『マトリックス』『アメイジング・スパイダーマン』などで有名な世界的衣装デザイナー。今回、新衣装を製作するというキムは、衣装制作にあたり鼓童の拠点である新潟県佐渡島に来島したという。
竹細工、焼き物、裂き織り、刺し子、ガラス工芸、草木染め、絹織物、能舞台など、佐渡の伝統芸能・伝統芸術、そして佐渡の自然に触れ、大きなインスピレーションを得てキムは、佐渡南西部に位置する小木半島の中央部「鼓童村」に到着し、中庭で〈NOVA〉メンバーを採寸。その後、「道」の通し稽古を見学したキムは「鼓童の『間』というサイレントなアートが魅力的。素晴らしいものが込み上げてきて、時差ボケも吹っ飛んでいた気がする」と話したという。また、鼓童研修所も訪問。「研修生が田んぼで民謡を歌う姿や、田植えの前に泥を慣らすために泥んこ遊びをしている姿は(作品の中でも田んぼや農作業のようなシーンがあるため、インスピレーションとして)ロベールにも共有した方が良いだろう」と語った。
キム・バレット インタビュー
ーー今回の衣装について.どのような想いを込めて製作されましたか?
〈NOVA〉の衣装はPhase2のケベック(での練習でロベールとのディスカッションから始まりました。その時、鼓童とも初めてお会いして、創造的なエネルギー、佐渡という本拠地、鼓童という団体がどう生まれたかというストーリーにインスピレーションをたくさん得ました。もっとも面白く感じたのは「私が見る鼓童」のアイディアをもとに衣装を展開させていくことでした。若くて、力強く、ダイナミックな演奏がありながら、日本の伝統や文化に敬意を示している彼らの姿がありました。
ーー何をイメージして製作された衣装なのでしょうか?
私はDNAや指紋などのデザインを通してそれぞれの個性やユニークさなどを語る視覚的ストーリーを描きたいと思っており、それらのデザインで同時に人類すべてを表現したいと思っています。
ーー〈NOVA〉衣装製作のハイライトを教えてください。
今回衣装を製作するにあたって、美しい佐渡島を訪れることが出来たこと、鼓童の本拠地である鼓童村や研修所を拝見し、佐渡に住んでいる素晴らしい職人出会えたことが私にとって〈NOVA〉の衣装作りの一番のハイライトでした。
ーーなぜ鼓童からの依頼を受けたのでしょうか?
ロベールとのコラボレーションは私にとって挑戦的で冒険的なプロジェクトに挑む最高の理由です。鼓童の様なカンパニーと出会ったことがなかったですし、一分一秒をとても楽しくさせてもらっています。
ーー苦労した点、面白かった点、楽しかった点を教えてください。
予算との兼ね合いは苦労していますが、鼓童の皆さんと出会えてコラボレーションをしていること自体が楽しいです。それに加えマークキム氏のアシスタントやエクスマキナ(ロベール・ルパージュの芸術指揮のもと、多分野で舞台演出・製作を担う総合制作会社)と仕事ができているのも嬉しいですし、鼓童のメンバーやスタッフと過ごした佐渡での思い出は一生忘れません。
ーー鼓童だからこそ必要だった工夫はありますか?
彼らが出す音を聞いて、感じるということの必要性を実感しました。衣装としては演奏者の身体性を表現すると同時に、衣装の形やスタイルに合わせて彼らの動きやすさを生み出すことに工夫が必要だと感じています。
ーー日本の芸能集団への衣装提供は(キム氏の中で)初めてですか?
はい、そしてこれが最後にならないよう祈ります!
鼓童メンバーインタビュー
ーー普段の鼓童の衣装と比べてどう違うのでしょうか。
石塚充:今回みんなで着たのは、青色のベースにカラフルな柄のついた通称「DNA」と呼ばれるものでしたが、おなじ模様でおなじような形状のものを着ても、着るメンバーによって似合い方が違ってみえたり、違う模様に見えたり、シーンごとにぜんぜん違った印象を受けたり、だけどすごく〈NOVA〉の世界に自然に馴染む、すごく不思議な衣装だなと感じました。
草洋介:普段の衣装(法被)の場合、強調されているのが「太鼓・人」、つまり音が鳴る、鳴らすということにフォーカスされたものに感じています。今回の〈NOVA〉の場合にも同じような要素はあるのですが、時に人と衣装が風景の一部になったり、現象を際立たせる影になったりと、役割が場面によって変化していく面白さがあるように思います。
住吉佑太:鼓童の法被、腹掛け股引といったものは、もともと職人の作業着です。しかし今回は、この舞台のために作られた衣装ということで、もっと具体的に衣装が世界観の一部となっています。作業着に、職人の歴史が染み込んでいるのと同じく、今回の〈NOVA〉の衣装にも、舞台芸術の歴史が染み込んでいて、長年かけて洗練されたメソッドが詰め込まれているように感じられます。
三浦友恵:私がゴーストダンスで着る衣装は、初めて着るスタイルです。全身タイツで生地もキラキラしています。しかし舞台では肌が艶やかに見え綺麗です。その上に布を纏い、布を捌きながら踊ります。
ーー実際に衣装を着て演奏した感想を教えてください。
石塚充:まだ試作段階なので、素材や形状など具体的な課題はあるにせよ、すごく着心地というか、居心地がよく、壮大な〈NOVA〉の世界のなかにでも自然体で入っていける、舞台で照明をあびているのに普段着でいるのと変わらない心地よさがあり、ぜんぶの衣装が完成するのが今から楽しみです。
草洋介:素材や形がとてもよく考えられていると感じました。太鼓を打っても、踊っても、笛を吹いても「やり辛さ」を感じることはほとんど無く、とても快適でした。あとは、肌を見せる要素も多いので鼓童の肉体性も感じていただける衣装になっていると思います。
住吉佑太:映像や写真で映える色使いだなと思いました。近くで見る印象と、離れて見る印象が全然違っていて、まさに舞台衣装といった感じです。
なお、秋葉原のONKYO BASEには2019年1月22日(水)~2月29日(土)まで鼓童〈NOVA〉特別ブースが開設され、鼓童・北林玲央モデルの舞台衣装(プロトタイプ)を展示しているほか、佐渡&ケベックでの練習の様子を撮影したメイキング映像を見ることができるという。